お釈迦様の生涯③
写真はインドのサールナートという町で撮影したものです。悟りを開かれたお釈迦様が共に修行に励んでいた五人の比丘に初めて教えを説いた場所としてしられています。これを「初転法輪・しょてんぼうりん」と言います。教えを車輪に例え、初めてその車輪を転がしたという意味です。この時、お釈迦様は五人の比丘達にこう説かれました。この世界は苦しみばかりである。この世界は苦しみの連続であると(苦諦)。そしてその苦しみを集めるのが煩悩であり、それは自己に執着する心であると(集諦)。その自己への執着から離れることによって、苦しみと向き合うことができると(滅諦)。そしてその道が仏法であると(道諦)。
お釈迦様がその生涯で説いて下さったお経典は八万四千あると言われていますが、その中に、仏説無量寿経(ぶっせつむりょうじゅきょう)というお経典があります。そこには、全ての生きとし生ける命を必ず我が悟りの世界であるお浄土へと生まれさせ仏に仕上げて見せると誓われた阿弥陀様について説かれてあります。この私の苦しみを我が苦しみと、私の悲しみを我が悲しみとされ、どこまで行ってもあなたを見捨てないと誓われたのが阿弥陀様です。
ある先輩が次のような言葉があるよと教えてくれました。「悲しみは悲しみを知る悲しみに救われ、涙は涙にそそがれる涙に助けられる」。私はこの人生で様々なことにぶつかりながら生きていきます。「どうして私だけがこんなことに」と苦しみの中に打ちひしがれます。そんな時に「頑張って前を向いて生きなさい」と言われても私にはどうすることもできません。しかしその私の悲しみを共に悲しんでくれる方と出会ったならば。私の涙に共に涙してくれる方と出会ったならば、状況がすぐ変わる訳ではありませんが、しかしそこに力強い安心感が恵まれていくのではないでしょうか。
お釈迦様はこの世は苦しみの連続だとお説きになりました。しかしだからといって諦めなさいと仰った訳ではありません。その私の苦しみを転じていく道をお説きになったのです。そして浄土真宗ではこの私の悲しみを我が悲しみとし、私の涙を我が涙として下さる阿弥陀如来という仏様のお心を聞かせて頂くことを大切にしております。その阿弥陀様に抱かれながら歩む人生は、赤子が母に抱かれながらも泣きじゃくり、しかし同時に、赤子は大いなる安心の中にあるようなものなのだよと聞かせて頂きます。